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【研究者対談】東京農業大学 庫本高志教授

A2ミルクの研究をする東京農業大学の庫本高志教授と対談を行いましたのでご紹介いたします。

★東京農業大学 庫本教授について

庫本高志教授

庫本教授は東京農業大学・動物科学科・動物栄養学研究室に所属。
現在は「動物を用いた遺伝と栄養の相互作用の解明」をテーマに研究を行なっています。
また、日本実験動物学会の理事も務めており、これまでに「ラットを用いたアトピー性皮膚炎に関する研究」等を発表しました。
出身の京都大学大学院では、農学研究(畜産学)から医学研究(病理学)へ進み、博士号を取得。
卒業後、国立がんセンター(研究員〜室長)京都大学(准教授)を経て、2018年から東京農業大学の教授として、研究及び学生の指導をしています。

★A2ミルクを研究することになったきっかけ

A2ミルクを研究することになったきっかけ

庫本教授がA2ミルクについて研究を始めたのは約一年前。
群馬県で牧場を経営している大学のOBから「A2牛のコロニーを作りたいので協力してほしい!」と相談を受けたのがきっかけでした。
偶然にも同じタイミングで研究室内に「A2ミルクを卒業論文のテーマに扱いたい!」という学生がいたことや、その学生の酪農実習先の牧場主がA2ミルクに興味を持っていたこともあり、話は一気に進みます。

元々、庫本教授は「遺伝と栄養の相互関係」を研究していたこともあり、遺伝子解析研究の素地もありました。
そのため、A2ミルクは「βカゼインの塩基置換(=突然変異)」の問題であり、それならば遺伝子検査ですぐに対応ができる…と、研究に協力することになります。

現在は「東京農業大学 動物栄養学研究室」の独自サイトを立ち上げ、機能性ミルク(A2ミルク)の研究過程をblogで公開しています。

★遺伝子検査の方法について

遺伝子検査の方法について

A2ミルクを生産するためには牛の遺伝子検査が欠かせません。
この遺伝子検査自体は難しいものではなく、牛の毛根(主に尾房)を採取する方法で既に確立されています。
しかし、現在のところ、A2に関する遺伝子検査は採取したサンプルをアメリカの機関に送り検査依頼をする方法が一般的。
この方法では手間も時間もコストも高額なる点が大きなネックになります。

一方、庫本教授が行なった遺伝子検査は、既にアメリカの検査機関で行なった遺伝子検査の結果と「同じ内容が出ている」と言います。
これは国内でも十分に検査対応は可能である…と言え、検査数が一定以上集まれば汎用性も上がる見込みが出てきます。

現時点では新型コロナウイルス感染の影響でサンプル採取が一部延期になった問題もありますが、東京農業大学近郊の牧場(6箇所)と協力しデータ採取を継続しています。
社会情勢を見ながら、協力牧場や検査サンプルを増やしていきたいと考えています。

★A2ミルクの研究と商品化の課題。

日本国内でも研究が始まったばかりで、A2ミルクに関するデータもまだまだアメリカやヨーロッパの論文を読み解いている段階。
A2ミルクの有用性は、論文の中にエビデンスとしてされているものもあるものの、100%立証されていない部分もあります。

そのため、庫本教授が東京農業大学にプロジェクト立ち上げを提案した際にも「エビデンスの有無」や「時期尚早では?」という意見がありました。
庫本教授は「大学として関わる以上、検査方法・論文をまとめ、英語で学術誌に投稿したい」と考えています。
具体的には、A1ミルクを投与した動物とA2ミルクを投与した動物で、健康のパラメータ等の科学的な差が生じるのか?を確認し「本当にA2ミルクは健康に有意と言えるのか?」をデータ化する方法です。

この担保となるデータや論文が無いまま、健康イメージが先行して商品化されることは庫本教授も懸念している点です。
また、人間の健康にも大きく影響する話になるため、最終的には医療機関と連携してA2ミルクの効果についての検証や、疫学調査を検討する必要性もあると考えています。
状況によっては「特定保健用食品」のような公的な許認可を得ることも視野に入れたほうがいいのでは?という話も出ました。

★今後のA2ミルク協会との関係について

現時点で、牧場や乳業関係者でも「A2ミルクの名前は知っているし、興味はあるけど…。実際はよくわからない」という声がほとんど。
メリットが多い…となんとなくわかっていても、エビデンスが少ない現状では生産者も乳業メーカーも積極的に取り組めないのも無理はありません。
加えて、生産や管理にかかるコストだけでなく「A2ミルク」という名称が消費者に受け入れられるか?商標的に問題がないか?という現場の声もあると言います。

先述の通り、日本国内でのA2ミルクに関する研究は始まったばかり。
庫本教授も「ゆくゆくは共同研究という形でお互いに情報交換ができる形が理想」と言います。

A2ミルク協会としても、庫本教授に学術的なバックアップをしてもらうメリットことに加え、国内での遺伝子検査体制が整えていただければ、従来の検査方法(=国外検査)に比べて安価で素早く検査結果が出るようになるのでは?…と期待が膨らみます。
また、今後課題になるであろう「生産された牛乳そのものに含まれるβカゼインの検査(=品質検査)」体制の確立も、庫本教授に協力を依頼しながら進めていきたいと考えています。

以上、東京農業大学庫本高志教授のインタビューでした。
(インタビュー 藤井・記事 藤本)

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