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【生産者インタビュー】那須拓陽高等学校様

国内2例目となるA2ミルクの販売を開始した那須拓陽高等学校様にインタビューを行いましたのでご紹介いたします。

★栃木県立那須拓陽高等学校ついて

那須拓陽高校

栃木県立那須拓陽高等学校の開校は1945年(昭和20年)。
同校のある那須塩原市は温泉地としても全国的に有名で、皇族の避暑地(那須御用邸)としても活用されている歴史ある土地です。
また、那須塩原市は全国有数の酪農地帯でもあり、その生産高は本州では第1位。
北海道を含めても、別海町、中標津町、標茶町に続くほどです。
そのため、行政も「那須塩原市牛乳等による地域活性化推進条例」を掲げ、官民一体となって事業展開をしています。

同校は農学校として出発した経緯があるため、現在でも農業教育や農業関連教育が大きな強み。
「農業経営科」のみならず、農業と関連が深い工学を学べる「生物工学科」や、生産された食品・食物について学べる「食品化学科」「食物文化科」といった特徴的な専攻科があります。

特筆すべきは「牛部(うしぶ)」という部活の存在。
その名の通り畜産関連の活動で、より畜産の経験を深めたい生徒にとっては非常に優れた特徴と言えるでしょう。

★A2ミルクを授業で扱うことになったきっかけ

A2ミルクを授業で扱うことになったきっかけ

担当(農業経営科/牛部)の関澤拓実 教諭・田口樹哉 実習教員の二人の先生は、A2ミルクに取り組むきっかけとして、
・以前から組合を通して情報は入ってきていた。
・令和2年3月に牛乳の製造販売許可が下り、付加価値の高い商品開発を考えていた。
・コロナ禍の中、登校再開に合わせて生徒が興味を持ちそうな新しい話題を提供したかった。
の3つを挙げています。

そのため、緊急事態宣言開けの6月登校再開に向けて、4月に同校で飼育する25頭の牛の遺伝子解析を実施し、検査の結果、9頭の牛が「A2牛」に該当したため、プロジェクトは本格的にスタートしました。

牛の管理は、授業や部活動を通して農業経営科と牛部のメンバーが行い、ロゴやパッケージは食品科学科が担当。
分娩スケジュールや授業等の日程を考慮し、まとまった乳量が見込める同年の10月に販売をすることになりました。

★教育機関としての課題

A2ミルクの発案から製品化までわずか半年という驚くほどの早さですが、全てが順調だったわけではありません。
特に苦労が多かった点として、関澤先生は「情報源がほとんどなかった」点を挙げています。
A2ミルクに関しては「βカゼインに起因する問題」とわかってはいても、それを裏付ける根拠が足りていません。
そのため、教育機関として「どこまで話をして良いか?」「どういう発信が良いのか?」という点は大きな問題があり、現在でも課題となっています。

また、製造においても他の生乳(A1A1・A1A2ミルク)との混入を避けるため、既存のタンクは使えません。
実習を担当する田口先生は、「農場と製造を行う学校が離れているため、現場ではバケット取り→冷蔵車を使いの製造施設に運ぶなどの苦労もありました。」とハード面の課題を挙げています。
価格を決める際にも教育機関という特性上、付加価値があるからと言って高価格設定をするわけにもいきません。
そこで、先行してA2ミルクを製品化していた事例を参考にしました。

情報が無い中での手探り状態でしたが、関澤先生は「何も無い状態で、まず手を先に挙げたのがよかった」と振り返ります。
逆に「動いた結果、那須拓陽高等学校に興味を持ってくれた人や、新しい情報が集まるようになり、生徒もA2ミルクを通して世界の酪農に興味を持つきっかけになった。」と言います。

★A2ミルクを数ある牛乳の選択肢のひとつに!

A2ミルクパッケージ

那須拓陽高等学校の「拓陽高牛乳(β-Casein A2)」の初回販売は同年の10月。
道の駅2店舗で300本を完売しました。

味そのものに大きな差は無い…としながらも、他の牧場で搾乳された生乳と混ざることがないため、ダイレクトに「那須拓陽高等学校の味が出た」と言います。
実際に購入したお客様からも「濃厚だけどあっさりしていて美味しい!」等の声があり、高評価だったそうです。

一方で、A2ミルクの特徴とも言える「お腹を壊しにくい」点に関しては、まだ追跡調査は行えていない課題もあります。
学内で販売したところ「普段はお腹を壊しやすいけどこれは違う気がする」という生徒の声や、同校教員が「普段は牛乳が飲めない家族に飲ませても大丈夫だった」等の内々の声もありました。

しかし、教育機関として今後も継続してA2牛を取り扱うためには、内輪の声だけでなく「科学的根拠が必要になってくる。」と関澤先生は言います。
今後は、細かい数字や臨床的な効果を検証のご協力を各研究機関にいただき、数多くある牛乳の選択肢の一つとしてA2ミルクの認知度を高めるきっかけにしていきたいと考えています。

★教育機関でA2ミルクを取り扱う意義

那須拓陽高等学校の学生は地域の農業後継者が多く「授業の一環でA2ミルクを取り扱えた教育的な意義は大きい」と関澤先生は言います。

今回のA2ミルクの生産・販売は初年度だったことに加え、コロナ禍の影響下で見通しが立たず、限定生産に止まりました。
また、一般販売許可を取得しているとは言え基本的に実習に合わせての生産になるため、年間を通して常時生産をしているわけではありません。
しかし、今回の先進的な取り組みを経て、同校に対する全国からの注目度は上がり、生徒も自分たちがやっていることに誇りを感じているようだ…と実感をもっていらっしゃいました。

★最後に

「将来的にA2ミルクと直接関わる仕事に就かなかったとしても、新しい情報を知っているのと知らないのでは大きく違います。
今後は、生産だけでなく販売に関する情報教育も取り入れて、地域の後継者育成に貢献できるよう、教育機関として活動していきたいと考えています。」

(インタビュー 藤井、記事 藤本)

  • まりー より:

    昨年の10月に道の駅に行き、たまたま牛乳を見かけて、美味しいですよと、言われ2個買ってきて飲んだらとても美味しくファンになりました。何回か電話したのですが入荷がないと言うこと。残念です。またお願いいたします。宇都宮から伺います。

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