2021/07/06
【協会理事インタビュー】藤井雄一郎代表理事
当協会の藤井雄一郎代表理事にインタビューを行いましたのでご紹介いたします。
★日本A2ミルク協会代表理事紹介
日本A2ミルク協会の代表理事を務める「藤井雄一郎」は1978年生まれ。
帯広畜産大学を2001年の卒業と同時に藤井牧場に入社しました。
2009年に同社の5代目代表に就任。
現在、関連会社を含め42人の従業員と共に約1000頭の牛を飼育し、年間約7500トンの牛乳を生産しています。
また、藤井牧場は日本で初となる砂のリサイクル機(サンドセパレーター)の導入や農場HACCP認証取得など、積極的に新しい技術や認証制度を導入しています。
2030年には日本農業の未来を切り拓く「富良野未来開拓村」の立上げ計画を進めています。
★A2ミルクを知ったきっかけ
藤井代表がA2ミルクの存在を知ったのは、アルタジャパン株式会社代表取締役でもある細野理事を通して知った情報からでした。
当初は「ニュージーランドで売上を伸ばしている新しいカテゴリーの牛乳がある」という程度の認識。
正直な話、最初はその効能には半信半疑でそれほど興味はなかったそうです。
しかし、諸外国での市場の広がり方を見ていると無視できるものでは無く、日本国内でも外国産のA2ミルク商品の輸入に興味を示す業者がある、生産者でもA2ミルクの取り組みをしている…という情報も耳に入るようになります。
そこで、キースウッドフォード教授の著書「Devil in the Milk」を読んでみると、考えが一転。
海外論文では、多くのエビデンスがあり社会に対して影響の大きいA2ミルクの必要性を強く感じました。
同時に、日本国内でA2ミルクに関する情報が無いことや、国内の大学にA2ミルクの研究を進める専門家がいなかったことに強い危機感を覚えました。
(日本語訳の本がない中、原文をgoogle翻訳等を駆使して苦戦しながら読んだそうです)
少ない情報を集める中「A2ミルクについて、もっと正確な情報が欲しい」「多くの人にA2ミルクについて知ってもらいたい!」という気持ちが高まります。
そこで「A2ミルクに関して正しく知ること」「憶測で話をするのでは無く、科学的データに基づいて正しく伝えること」を目的に、当初は「Devil in the Milk」の日本語訳出版を成立するために「日本A2ミルク協会」の立ち上げを決意しました。
そこには新しい高付加価値の牛乳を売り込む/既存の牛乳をただ否定する…という意図はなく、オールジャパンで知識や情報を共有することで、業界全体に貢献したい強い思いがありました。
★現在の活動状況
現在行なっている活動は
・理事会(2週間に1回開催)
・A2ミルクの流通時における基準作り(牛の遺伝子検査および生乳のタンパク質検査)
・事務局による研究論文の翻訳
・東京農業大学との共同研究
・関係者インタビュー
…などが挙げられ、情報発信としてホームページやメルマガの運営も行なっています。
また、直近では2021年7月12日から第1回目となるキースウッドフォード教授の講義(勉強会)がスタート。
現在、外国の検査機関に依頼している牛と生乳の各検査を、最終的には日本国内で行えるよう体制作りも同時に進めています。
A2ミルク普及の第一意義は、今まで牛乳が飲めなかった人に牛乳を届けることができる事です。
A2ミルクがどのような人に効果的なのか?
エビデンスに基づいて、正しい情報をお伝えすることが使命です。
もちろん、A2ミルクだけで全てが解決する…という話ではありません。
しかし、牛乳の選択肢が増えることは消費者の生活の質が向上することになり、それがそのまま酪農・乳業業界にとっても大きなメリットに繋がると考えています。
★A2ミルクを消費者に安心して届けるために
藤井代表が危惧していることの一つに「A2ミルクの良いイメージだけが先行して、中身が伴わない商品が市場に流通すること」があります。
現在、日本国内でA2ミルクの商品開発を進めている生産者、メーカー等は協会が把握しているだけでも十数件あります。
しかし、それぞれの事業所において規格や水準にばらつきがみられ、このままでは消費者の信頼を損ねる可能性があります。
そこで、A2ミルク協会では全国水準を作るべく、牛の遺伝子検査および生乳のタンパク質検査を行いデータ取りをしています。
日本A2ミルク協会が目指すところは、世界最高水準のA2ミルクを国内に流通させることです。
世界最高水準の根拠は
・全頭A2A2牛(遺伝子検査)であること
・生乳にβカゼインA1(タンパク質検査)を含まないこと
の2点です。
課題としては同一の牧場内にA1遺伝子を持つ牛が混在するなかで、A2ミルクを生産すると分娩や牛の移動時にA1牛が混ざり、A1ミルクがA2ミルクに誤って混じってしまう可能性があります。
また、遺伝子検査そのものも精度(サンプルの取り違え)なども懸念されるため、そのような事態を回避できるように、慎重に条件を検討しています。
★今後の展開と日本国内の動き
A2ミルク協会は令和3年現在、2期目に入り活動が本格化してきました。
令和3年4月に第一回総会を開き、そのニュースは酪農業会のみならず一般向けの新聞でも取り上げられました。
また、A2ミルク協会への新規入会や問い合わせも徐々に増え、生産者のみならず有識者や他業種でもA2ミルクに関して興味関心も高まってきていると言えます。
最近では医療分野の資料や書籍でも「A2ミルク」の表記が散見されるようになったり、消費者側からも「A2ミルクに興味があるけど、どこで買えば良いかわからない」「毎回通販はさすがに無理…。」という声があるのも事実です。
藤井代表は「A2ミルクのメリットを知れば知るほど、これからの社会に欠かせない牛乳になる!」と確信しています。
そのためにも、まずは「正しく知る事」「正しく伝える事」を重点的に考え、10年先の酪農業界を見据えて活動を続けていきたい…と考えています。
(インタビュー・記事 藤本)
A2ミルクの普及とても期待しています。
私は食のセレクトショップと言って飲食店を経営してますが、A2ミルクの存在を知って出来ることをコツコツとし存在を広めています。
酪農は大変なお仕事です。生き物の牛を遺伝子で分けるのはいろいろと困難もあると思いますが、応援しています。