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代表理事より 年頭所感

年頭所感
日本A2ミルク協会 代表理事 藤井 雄一郎

2023年の新春を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。

昨年を振り返りますと、酪農業界はかつてないほどの大苦難の一年でありました。長期にわたるコロナ禍による消費低迷と過剰な生産により、多数の在庫を抱えて始まった年当初から、2月には勃発したロシアによるウクライナ侵攻等に起因する供給制約、エネルギーや飼料、食料等の価格高騰、労働需給の逼迫などを背景に、世界的にインフレ圧力が高まりました。合わせて歴史的な円安も進み、一時1ドル150円を超す相場となりました。国内では、酪農生産に関わる多くのもの、飼料、肥料、燃料、各種資材、建築費等のコストが跳ね上がりました。一方で、F1をはじめとする子牛市場価格の暴落から、個体販売の売上が激減し、規模の大小にかかわらず、経営が困難になる酪農場が多く、離農が各地で進んでしまったことは周知のとおりであります。
こうした背景のなか、期中における飲用乳価の改訂があり、また来期に向け加工原料乳価格に関しても大幅な引き上げがあるなど、非常に大きな変化が起きた一年となりました。
こうした環境のもと、日本におけるA2ミルクの普及が、疲弊した今日の酪農乳業界にとって、付加価値と消費喚起する新しい商品として業界に役立つことができるとの確信のもと、日本A2ミルク協会では、2022年度を「A2ミルク普及への土台作りの一年」と位置付け、二つの柱を掲げて活動してきました。
 
 
第一の柱「認証基準の設定」については、まず国内におけるβカゼインの検査法および検査体制の確保に向けて、東京農業大学、北海道大学と共同研究を行い、検査体制の確立に向けて大きな成果を得られることとなりました。東京農業大学・庫本先生は、前年の日本における個体の遺伝子検査について論文で発表され、国内のA2個体の遺伝子検査をすでに確立していただいておりますが、それに加えて乳中βカゼインの検査についても重井医学研究所の松山先生と共同研究の成果としてモノクローナル抗体を用いたエライザの検査法を国内に先駆けて確立されました。このことにより、国内基準の設定と国内における検査体制の確保を両輪で進めていくことが可能となりました。2年前に検査機関を海外に求めるしかなかった状況からは大きな進展と言え、今後の普及、販売拡大した際にも安心して消費者にA2ミルクをお届けできる信頼性のある検査体制構築に、大きく前進したものと思っております。
 
 
第二の柱「国内におけるA2ミルク研究の推進」については、前述した東京農業大学、北海道大学の他、東京工業大学大学院、山本先生とも共同研究体制を構築することができました。山本先生は、2022年10月にA2ミルクに特異的に生産されるBCM10の論文を発表されております。これはいままで海外A1ミルクの主体的な研究(人体に及ぼす悪影響について)とは違った側面からの研究となり、A2ミルクのよりポジティブな影響について発表されています。これは日本型の新しいA2ミルク普及の大きな観点となる論文であると考えてられます。国内におけるA2ミルクの研究は始まったばかりですが、同じく10月には岡山大学で開催された関西畜産学会で国内初のA2ミルクシンポジウムが開催され、150名を超える参加者が集まり、国内のA2ミルクへの興味関心の高まりを反映しておりました。今後の国内におけるA2ミルク研究の進展が期待されます。
 
 
本年は、乳価の値上げや景気の悪化などの影響等による消費減も懸念されますが、本来の牛乳の良さ(味、成分、コストパフォーマンス)をもう一度見つめなおし、消費者への浸透が進むことを期待しています。
2023年の干支は、「癸卯」(みずのとう)です。これは、「自らのよりどころとする基準や進むべき道をしっかりと見定めたうえで考え行動し、新たな発展へと向かう年」と解釈されるそうです。
これはまさに協会が発足以来、A2ミルクの研究を重ね、国内基準の制定に向けて、検査体制などの確立を急務として動いてきたことを土台にして、新たな発展(A2ミルクの普及)へと向かう状況と合致しております。
 
 
日本A2ミルク協会は、日本酪農乳業界のさらなる発展のもと、より健康を求める消費者への価値提供と選択肢を増やすということで、日本社会、酪農乳業界に貢献していくことを考えております。

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